10条 国民の要件 国籍法・最大判昭和36年4月5日 国籍存在確認請求(1)

 

▼ 目次

▼ 10条 国民の要件 ・最大判昭和36年4月5日 国籍存在確認請求(2) 【最大判昭和36年4月5日】補足意見等

▼ 10条 国民の要件 ・最大判昭和36年4月5日 国籍存在確認請求(3) 【最大判昭和36年4月5日】補足意見等


第三章 国民の権利及び義務

 

第十条  日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

 

【法律】は、国籍法

・国籍法では出生による取得と帰化による取得がある。

・国籍法では、原則血統主義(親の国籍を引き継ぐ)をとりつつ、例外として出生地主義(出生地国の国籍を認める)をとっている(2条参照)。

 

国籍法

(この法律の目的)

第一条  日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。

 

(出生による国籍の取得)

第二条  子は、次の場合には、日本国民とする。

 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。

 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。

 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。

 

(認知された子の国籍の取得)

第三条  父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。

 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。

 

(帰化)

第四条  日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。

 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。

 

第五条  法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。

 引き続き五年以上日本に住所を有すること。

 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。

 素行が善良であること。

 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。

 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。

 日本国憲法 施行の日以後において、日本国憲法 又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。

 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。

 

第六条  次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。

 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有するもの

 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの

 引き続き十年以上日本に居所を有する者

 

第七条  日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とする。

 

第八条  次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。

 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの

 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの

 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの

 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの

 

第九条  日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。

 

第十条  法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければならない。

 帰化は、前項の告示の日から効力を生ずる。

 

(国籍の喪失)

第十一条  日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。

 

第十二条  出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法 (昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。

 

第十三条  外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる。

 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。

 

(国籍の選択)

第十四条  外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法 の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

 

第十五条  法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。

 前項に規定する催告は、これを受けるべき者の所在を知ることができないときその他書面によつてすることができないやむを得ない事情があるときは、催告すべき事項を官報に掲載してすることができる。この場合における催告は、官報に掲載された日の翌日に到達したものとみなす。

 前二項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から一月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつてその期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合において、その選択をすることができるに至つた時から二週間以内にこれをしたときは、この限りでない。

 

第十六条  選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。

 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失つていないものが自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であつても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。

 前項の宣告に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

 第二項の宣告は、官報に告示してしなければならない。

 第二項の宣告を受けた者は、前項の告示の日に日本の国籍を失う。

 

(国籍の再取得)

第十七条  第十二条の規定により日本の国籍を失つた者で二十歳未満のものは、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。

 第十五条第二項の規定による催告を受けて同条第三項の規定により日本の国籍を失つた者は、第五条第一項第五号に掲げる条件を備えるときは、日本の国籍を失つたことを知つた時から一年以内に法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。ただし、天災その他その者の責めに帰することができない事由によつてその期間内に届け出ることができないときは、その期間は、これをすることができるに至つた時から一月とする。

 前二項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。

 

(法定代理人がする届出等)

第十八条  第三条第一項若しくは前条第一項の規定による国籍取得の届出、帰化の許可の申請、選択の宣言又は国籍離脱の届出は、国籍の取得、選択又は離脱をしようとする者が十五歳未満であるときは、法定代理人が代わつてする。

 

(省令への委任)

第十九条  この法律に定めるもののほか、国籍の取得及び離脱に関する手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。

 

(罰則)

第二十条  第三条第一項の規定による届出をする場合において、虚偽の届出をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 前項の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二条 の例に従う。

 

 

 

【最大判昭和36年4月5日】

要旨

判示事項

朝鮮人男子と婚姻した内地人女子の平和条約発効後の国籍。

裁判要旨

朝鮮人男子と婚姻した内地人女子で日本の国内法上朝鮮人としての法的地位をもつていた者は、平和条約発効とともに日本国籍を失う。

 

判旨

 1 上告人は、原判決が憲法一〇条、一一条、一二条、一三条及び国籍法に違反した裁判であるとする。なるほど、憲法一〇条は、日本国民の要件を法律で定めることを規定している。しかし、これを定めた国籍法は、領土の変更に伴う国籍の変更について規定していない。しかも、領土の変更に伴つて国籍の変更を生ずることは、疑いをいれないところである。この変更に関しては、国際法上で確定した原則がなく、各場合に条約によつて明示的または黙示的に定められるのを通例とする。したがつて、憲法は、領土の変更に伴う国籍の変更について条約で定めることを認めた趣旨と解するのが相当である。それ故に憲法一〇条に違反するという主張は理由がなく、国籍法も本件に関しては適用がない。また、憲法一一条、一二条、一三条についても、上告人の日本国籍の喪失は、つぎに述べるように、平和条約の規定に基くものであつて、憲法のこれらの規定に違反する点は認められない。

 2 日本国との平和条約は、第二条(a)項で、「日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」と規定している。簡単にいえば、朝鮮の独立を承認して、朝鮮に属すべき領土に対する主権を放棄することを規定している。この規定は、朝鮮に属すべき領土に対する主権(いわゆる領土主権)を放棄すると同時に、朝鮮に属すべき人に対する主権(いわゆる対人主権)も放棄することは疑いをいれない。国家は、人、領土及び政府を存立の要素とするもので、これらの一つを缺いても国家として存立しない。朝鮮の独立を承認するということは、朝鮮を独立の国家として承認することで、朝鮮がそれに属する人、領土及び政府をもつことを承認することにほかならない。したがつて、平和条約によつて、日本は朝鮮に属すべき人に対する主権を放棄したことになる。

 このことは、朝鮮に属すべき人について、日本の国籍を喪失させることを意味する。ある国に属する人は、その国の国籍をもつ人であり、その国の主権に服する。逆にいえば、ある国の国籍をもつ人は、その国の主権に服する。したがつて、日本が朝鮮に属すべき人に対する主権を放棄することは、このような人について日本の国籍を喪失させることになる。

 3 朝鮮に属すべき人というのは、日本と朝鮮との併合後において、日本の国内法上で、朝鮮人としての法的地位をもつた人と解するのが相当である。朝鮮人としての法的地位をもつた人というのは、朝鮮戸籍令の適用を受け、朝鮮戸籍に登載された人である。日本と朝鮮の併合の前に、韓国には民籍法があり、韓国の国籍をもつた人は、民籍に登載されていた。併合の後に、民籍法に代つて朝鮮戸籍令が施行され、民籍に登載されていた人は、朝鮮戸籍に登載されることになつた。これと異つて、元来の日本人は、戸籍法の適用を受け、戸籍に登載される。朝鮮戸籍からはつきり区別するために、これを内地戸籍ということがある。このように、朝鮮人と日本人は、はつきりと戸籍を異にするばかりでなく、それと同時に、適用される法律を異にした。

 朝鮮人との婚姻又は養子縁組によつて朝鮮人の家に入つた日本人は、共通法三条一項の「一ノ地域ノ法令ニ依リ其ノ地域ノ家ニ入ル者ハ、他ノ地域ノ家ヲ去ル」という規定に従つて、朝鮮戸籍に登載され、他方で内地戸籍から除籍された。このような人は、法律上で朝鮮人として取扱われ、朝鮮人に関する法令が適用され、日本人に関する法令は適用されなかつた。法律上から見るかぎり、まつたく朝鮮人と同じであり、朝鮮人にほかならなつた。このことは、あたかも日本人の女が外国人と婚姻し、夫の国籍を取得した場合と同じである。改正前の国籍法によれば、このような場合に、日本人の女は、日本の国籍を喪失する。そのために、法律上から見れば、日本の法令は適用されず、もつぱら外国の法令が適用されることになり、法律的には外国人にほかならないことになる。日本人の女が朝鮮人と婚姻し、朝鮮戸籍に入籍し、内地戸籍から除籍された場合も、右と同じであり、法律上では日本人でなく、朝鮮人になつたものと見るほかない。

 連合国による日本占領の時代にも、朝鮮人としての法的地位をもつ者は、日本人としての法的地位をもつ者から、法律上で区別されていた。連合国総司令部の覚書は、あるいは朝鮮人を外国人と同様に取扱い、あるいは「非日本人」という言葉のうちに朝鮮人を含ませ、あるいは「外国人」という言葉のうちに朝鮮人を含ませていた。連合国総司令部の覚書に基いて発せられた日本政府の「外国人登録令」は、朝鮮人を当分の間外国人とみなし、これに入国の制限と登録を強制した。そのさいに、朝鮮人というのは、法律上で朝鮮人としての法的地位をもつ人のことである。そのうちに、婚姻又は養子縁組によつて朝鮮戸籍に登載されるに至つた人も含まれていたことは、いうまでもない。これらの人は、右に述べたように、法律上では、朝鮮人に関する法令が適用され、朝鮮人に異らないものであり、実際において、「非日本人」または「外国人」として取扱われ、外国人として登録もしたのであつた。

 これを要するに、朝鮮人としての法的地位をもつ人は、日本人としての法的地位をもつ人から、日本の国内法上で、はつきり区別されていた。この区別は、日本と韓国の併合のときから一貫して維持され、占領時代にも変らなかなつた。このような法律的状態の下に、平和条約が結ばれ、日本は朝鮮の独立を承認して、朝鮮に属すべき人に対する主権を放棄し、その人の日本国籍を喪失させることになつた。そうしてみれば、日本国籍を喪失させられる人は、日本の法律上で朝鮮人としての法的地位をもつていた人と見るのが相当である。

 4 本件の上告人は、元来は日本人であるが、昭和一〇年七月一六日に朝鮮人であるDと婚姻入籍したことは、原判決の適法に確定したところである。それによつて、上告人は、法律上で朝鮮人としての法的地位を取得し、日本人としてのそれを喪失したことになる。

 平和条約によつて、日本は、朝鮮の独立を承認し、朝鮮に属すべき人の日本国籍を喪失させることになつた。朝鮮に属すべき人というのは、さきに述べたように、日本の法律上で、朝鮮人としての法的地位をもつていた人である。本件の上告人は、この法的地位をもつていたから、平和条約によつて、日本の国籍を喪失したことになる。

 5 上告人は、上告理由第一のうちで、日本と韓国の合併がなかつたならば、朝鮮人Dと婚姻しなかつたであろうということも主張している。しかし、法律上の問題としては、朝鮮人と婚姻したという場合において、朝鮮人としての法的地位を取得するか、その結果として平和条約によつて日本の国籍を喪失するかということが問題であつて、上告人が昭和一〇年七月一六日に朝鮮人Dと婚姻入籍したことは、原判決の適法に確定したところであり、このように確定した事実に基いて、原判決が日本の国籍を上告人が喪失すると判断したのは正当である。