13条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

 目次


本条の趣旨

前段で「個人として尊重」として、基本的人権の中核となる思想である「個人の尊重」の原理を掲げている。

後段で「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を「公共の福祉」に反しない限り、「立法その他の国政の上で、最大の尊重」を必要とすることを規定している、

これは、憲法は人権をまもるための性質を有する(自由の基礎法・近代的意味の憲法)ので、人権条項全体を基礎づける原則を宣言したものである。

 

【個人の尊重】

 

「個人の尊重」としての個人主義とは、全体主義(国家・集団の利益に究極の価値を置く)、利己主義(自分自身の利益に究極の価値を置く)とは異なる原理で、自律・自己決定・博愛を基礎に、個人に究極の価値を認め、それら個人としての価値をすべての人々に平等に認める思想といえる。

 

しかし、自律と自己決定は、責任を伴う強い個人を想定しており、博愛は、人間性の感情に反しても万人に尊厳を認めるよう考える点で、現実の弱い個人(自由からの逃走)、人間性の感情に反していると感じる点で感銘力を欠くことなど実現不可能な思想ともいえる。

 

そこで、個人主義とは指導原理としての価値を有する理念と解される。個人主義の理念は、現実との乖離を直視しながらも、国際・国内の紛争解決の指導原理として非常に重要な役割がある。

 

 

【生命・自由及び幸福追求に対する国民の権利】

・前段の個人の尊重を受けて、後段で生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を立法その他国政の上で、最大の尊重を必要と規定し、ヴァージニア権利章典・アメリカ独立宣言と同じ系譜に連なるものである。

・幸福「追求」としているのは、幸福の内容自体は個々人が決定することで、そのような幸福を追求する条件・手段に関する規定を設けるべきとの考え方に基づいている。

・初期の学説では、13条で具体的権利性を認めてこなかった。

・しかし、1960年以降の激しい社会経済の変動により生じた諸問題等に法的に対応する必要性が高まり、個人尊重の原理に基づく幸福追求権を新しい人権の根拠と解する考え方が発展した。「新しい人権」とは、一般的自由を解する見解もあるが、人権のインフレ化を防ぎ、個人主義・幸福追求の条件・手段を設ける前段の性質から、「自律的な個人が人格的に生存するために不可欠と考えらえる不可欠と考えられる基本的な権利・自由として保護に値する法的利益」と解する。

 

【公共の福祉】

・日本国憲法は、各人権に個別的な制限の根拠・程度を規定せずに、「公共の福祉」による制約が存する旨の一般的に定める方式をとる。

・「公共の福祉」については、かつては抽象的な「公益」「公共の安寧秩序」と解して、法律の留保と同レベルで、権利制限を根拠と課す考え方も存在した。しかし、個人の尊厳を基礎とした人権を制約するためには、具体的な制約根拠が必要である。

・そこで、「公共の福祉」とは人権相互の矛盾衝突を調整するための実質的衡平の原理と解され、人権すべての論理必然的に内在する性質のもので、権利の性質に応じて具体的な権利の制約根拠をもっての程度が異なるとされる。

・内在的制約とは、他人の生命・健康を害してはならない・他人の人間としての尊厳を気づ着けてはならない・他人の人間と衝突する場合の相互調整の必要という観念から帰結される限界等と考えられる。しかし、内在的制約のその具体的意味・実質的な正当化根拠を示さないと、法律の留保と同じく抽象的な概念により制約として、個人の尊厳を害する結果となる点で注意が必要である。



第13条
個人の尊重
13条 個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉
13条 個人の尊重(1) ・最大判昭和23年3月24日・東京地判昭和39年9月28日・大阪高判昭和50年11月27日・札幌地裁平成9年3月27日
13条 個人の尊重(2)山口地裁下関支部平成10年4月27日
個人の尊重(3)・東京高裁平成11年8月30日
個人の尊重(4)最判平成12年2月29日 エホバの証人・宗教的理由による輸血拒否訴訟
個人の尊重(5-1) 【熊本地裁平成13年5月11日(ハンセン病訴訟事件)】(1)
個人の尊重(5-2) 【熊本地裁平成13年5月11日(ハンセン病訴訟事件)】(2)
個人の尊重(5-3)【熊本地裁平成13年5月11日(ハンセン病訴訟事件)】(3)
個人の尊重(5-4)【熊本地裁平成13年5月11日(ハンセン病訴訟事件)】(4)

幸福追求権・新しい人権
幸福追求権(1)・最大判昭和25年11月22日・最大判昭和45年9月16日・喫煙禁止訴訟・最判平成15年12月11日・ストーカー規制法

新しい人権 【最大判昭和44年12月24日 京都府学連事件】【最大判昭和61年6月11日 北方ジャーナル事件】【最判平成7年12月15日 指紋押捺制度の合憲性】

プライバシー権
プライバシー権(1)東京地判昭和39年9月28日 宴のあと事件・東京高決昭和45年4月13日 エロス+虐殺事件・最判昭和56年4月14日 前科照会事件
プライバシー権(2) 最判平成6年2月8日・ノンフィクション逆転事件・最判昭和63年7月15日 麹町中学校内申書事件
ライバシー権(3)最判平成15年9月12日・早稲田大学江沢講演会名簿提出事件・最判平成15年3月14日 長良川リンチ殺人事件報道訴訟
プライバシー権(4-1)最判平成20年3月6日・住基ネット訴訟・高裁の判断
プライバシー権(4-2)最判平成20年3月6日・住基ネット訴訟・最高裁の判断
プライバシー権(5)最判平成13年12月18日 レセプト情報公開請求事件・最判昭和63年12月20日 囚われの聴衆 伊藤正巳補足意見
プライバシー権(6)最判平成14年9月24日 石に泳ぐ魚
プライバシー権(7)・大阪高裁平成12年2月29日 堺通り魔殺人事件名誉毀損訴訟
プライバシー権(8)・東京高裁平成13年7月18日
プライバシー権(9) 指紋押捺 最判平成9年11月17日 再入国不許可処分取消等請求
プライバシー権(10)東京地裁平成5年11月19日・大阪高裁平成11年11月25日
プライバシー権(11)東京高裁平成12年10月25日・最判平成7年9月5日

自己決定権
自己決定権 最判平成8年7月18日修徳高校パーマ退学訴訟等

人格権
人格権 最大判昭和44年12月24日 京都府学連事件等

肖像権
肖像権 最判平成17年11月10日等

環境権
環境権(1) 最判平成18年3月30日
環境権(2) 大阪高裁昭和50年11月27日・大阪国際空港公害訴訟鹿児島地裁昭和47年5月19日
環境権(3)最大昭和56年12月16日・金沢地裁平成3年3月13日・小松基地騒音差止請求等
環境権(4)女川原発訴訟・仙台地裁平成6年1月31日・仙台高裁平成11年3月31日
環境権(5)長良川河口堰建設差止訴訟・古屋高裁平成10年12月17日・岐阜地裁6年7月20日