性別による差別(1)刑事法関係

 

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【刑事法関係】

【最判昭和28年6月24日・刑法177条】

要旨

強姦罪を定めた刑法一七七条は、憲法一四条一項に違反しない。

 

判旨

 刑法一七七条は、「暴行又ハ脅迫ヲ以テ十三歳以上ノ婦女ヲ姦淫シタル者ハ強姦ノ罪ト為シ二年以上ノ有期懲役ニ処ス十三歳ニ満タサル婦女ヲ姦淫シタル者亦同シ」と規定し、強姦罪の成立には刑法上その客体を婦女のみに限つていること並びに憲法一四条一項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定していることは、所論のとおりである。しかし、右憲法一四条一項の規定が、国民を政治的、経済的又は社会的関係において原則として平等に取り扱うべきことを規定したのは、基本的権利義務に関し国民の地位を主体の立場から観念したもので、国民がその関係する各個の法律関係においてそれぞれの対象の差に従い異る取扱を受けることまで禁ずる趣旨を包含するものでないこと、並びに、国民の各人には経済的、社会的その他種々な事実的差異が現存するのであるから、一般法規の制定又はその適用においてその事実的差異から生ずる不均等があることは免れ難いところであり、従つて、その不均等が一般社会観念上合理的な根拠のある場合には平等の原則に違反するものといえないことは、夙に当法廷の判例とするところである。(前者につき判例集四巻一〇号二〇四〇頁後者につき同巻六号九六一頁参照)。

 そして、刑法が前記規定を設けたのは、男女両性の体質、構造、機能などの生理的、肉体的等の事実的差異に基き且つ実際上強姦が男性により行われることを普通とする事態に鑑み、社会的、道徳的見地から被害者たる「婦女」を特に保護せんがためであつて、これがため「婦女」に対し法律上の特権を与え又は犯罪主体を男性に限定し男性たるの故を以て刑法上男性を不利益に待遇せんとしたものでないことはいうまでもないところであり、しかも、かゝる事実的差異に基く婦女のみの不均等な保護が一般社会的、道徳的観念上合理的なものであることも多言を要しないところである。されば、刑法一七七条の規定は、憲法一四条に反するものとはいえない。それ故、本論旨も採用できない。

 

【最判昭和32年6月8日・尼崎市売春等取締条例事件】

要旨

尼崎市売春取締条例(昭和二七年条例四号)三条は、報酬を受け、もしくは受ける約束で性交またはこれと類似の行為をするものを処罰するのであり、女性のみを処罰の対象とするものではないから、憲法一四条に違反しない。

 

判旨

所論尼崎市売春等取締条例三条は、「売春をした者は五、〇〇〇円以下の罰金又は拘留に処する(一項)、常習として売春をした者は三月以下の懲役又は五、〇〇〇円以下の罰金に処する(二項)」と規定しているのであるが、この売春の意義に関し、同二条は「この条例で売春とは報酬を受け若しくは受ける約束で不特定の相手方と性交又は性交類似行為をすることをいう」と規定しているのであつて、この所罰の対象となるものは必ずしも女性のみに限らないこと原判示のとおりであるから、女性のみを処罰の対象とするが故に同条が憲法一四条に違反するとの論旨は、ひつきょう右条例二条の趣旨を正解せざるにもとずくものと云わなければならない。

 また同条例には、売春行為の相手方となるものを処罰する規定を欠くことは所論のとおりであるけれども、右条例三条は、「報酬を受け若しくは受ける約束で」性交又はこれと類似の行為をするものを処罰するのであり、(この行為者に関するかぎり男女を差別しないことは前述のとおりである)すなわち「報酬を受け若しくは受ける約束で」ということは同条による処罰要件であつて、対価を払つて、その相手方となるものとはもとより、行為の態様を異にすることであり、かかる要件の有無によつて一方を処罰し、他方を処罰しないとするのも、一に刑事政策上の理由にもとずくものに過ぎず、所論のように、男尊女卑の思想に出でて、性別の故に、かかる区別をしたものでないことはきわめて、明瞭である。所論違憲の主張は、所詮その前提を欠くものというの外なく論旨は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

 

【最判昭和37年12月18日・買収防止法】

要旨

売春防止法5条は、女性のみを処罰の対象とするものでないから、憲法14条に違反しない。

 

判旨

 所論は、売春防止法五条は女性のみを対象として売春の予備的行為を処罰するものであつて、両性の本質的平等に反する規定であり、憲法一四条に違反する旨主張するが、売春防止法五条は女性のみを処罰の対象とするものではないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、適法な上告理由に当らない。