性別による差別(4)女性の再婚禁止期間・国籍法・入会権

 目次

【親族関係】

 

【広島高裁平成3年11月28日 女性の再婚禁止期間違憲訴訟】

要旨

女性に対してのみ再婚禁止期間を定めた民法733条は、憲法13条・14条1項・24条の規定の一義的な文言に違反するとまでいえず、民法733条の立法をし、これを廃止または改正しない国会議員の行為および同条を廃止または改正するための法律案を国会に提出しない内閣の行為に国家賠償法上の違法性はない。

 

判旨

2 民法七三三条の憲法適合性について

() 憲法一四条一項、二四条二項について

 憲法は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した家族関係を理想とし、婚姻及び家族に関する事項に関しては、法律は右の点に立脚して制定されなければならないとし(同法二四条二項)、民法は、これを承けて、一夫一婦制を定め、その上に立ちつつ、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定し、また婚姻成立の日から二百日後又は婚姻の解消若しくは取消の日から三百日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定する(民法七七二条)ことによって、社会構成の基礎となる夫婦を中心とする家族関係を明確にし、これによって家庭生活の平穏を保護し、子の福祉を図っているところである。

 ところで、右法制の下においては、現に民法七三三条が採用しているような女が再婚する場合には一定の再婚禁止期間を設けるというような立法措置が併せて講じられない場合には、女が前婚の解消又は取消の日から三〇〇日以内で、かつ後婚成立の日から二〇〇日後に産んだ子については、嫡出の推定が重複することとなるところ、かかる父性の混同が生ずるような事態が法制上当然生ずることは、家族関係を不明確にし、国家、社会の基盤となる家庭を不安定ならしめる点から望ましくないばかりか、出生子の利益を損ない、後婚の家庭生活の平穏をも妨げることとなるから、父性の混同を防止し、女が再婚した場合における出生子の利益や後婚の家庭生活の平穏を保護するため、現に民法が採用しているような再婚禁止期間の制度その他の何らかの立法措置が必要であることはいうまでもない。

 そうして民法七三三条は「女は、前婚の解消又は取消の日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と定め、女子についてのみ再婚禁止期間を設けていて、再婚の要件について男女を区別しているところ、憲法一四条一項は、すべての人をすべての点について法上平等に取り扱うことまでを要求しているものではなく、個人的特性に基づく差異があるときは、その差異に応じた合理的な差別は許されるところであるとしても、同項は、特に人種・信条、社会的身分又は門地と並んで性別を掲げて、これにより政治的、経済的又は社会的関係において差別することを禁じていること、また、同法二四条二項はこれを受けて、前示のとおり、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」ことを謳っているのであるから、女にのみ再婚禁止期間を設けてその婚姻の自由を制約することは、それが前示の父性の混同を防止し、出生子の利益や後婚の家庭生活の平穏を保護するという目的を達成するために必要やむを得ない手段でなければならず、そうでないにもかかわらず再婚禁止期間を設けた場合には、再婚に関して女子についてのみ不合理な差別を強いるものとして違憲の疑いが生じかねないところである。

() 憲法二四条一項について

 憲法二四条一項は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」旨規定しているが、この規定が婚姻の要件として両性の合意以外の要件を定めることを一切禁止する趣旨であるとは解されず、現に民法では、婚姻は戸籍法の定めるところによってこれを届け出ることによって成立するものとされ(同法七三九条)、婚姻適齢が設けられ(同法七三一条)、未成年者の婚姻については父母の同意が要件とされ(同法七三七条)、重婚が禁止され(同法七三二条)、近親婚が禁止される(同法七三四条)などしているのであるから、女子について再婚禁止期間を設けることが直ちに憲法の右条項に違反するものではないことはいうまでもない。

() 憲法一三条について

 控訴人らは、民法七三三条が憲法一三条に違反するとも主張する。しかし、同条の規定は、個人の尊重を国政の基本とすることを宣明した規定にすぎないから、民法七三三条の規定が法の下の平等を定めた憲法一四条一項の規定には違反しないのに、同法一三条の規定には違反するという事態は到底想定できないところである。」

 

 

 

【最判平成7年12月5日 女性の再婚禁止期間違憲訴訟】

要旨

再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法733条は、合理的根拠に基づくもので、憲法14条1項に違反せず、同規定を改廃しない国会ないし国会議員の行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。

 

判旨

 国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではなく、国会ないし国会議員の立法行為(立法の不作為を含む。)は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというように、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法一条一項の適用上、違法の評価を受けるものでないことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和五三年(オ)第一二四〇号同六〇年一一月二一日第一小法廷判決・民集三九巻七号一五一二頁、最高裁昭和五八年(オ)第一三三七号同六二年六月二六日第二小法廷判決・裁判集民事一五一号一四七頁)。

 これを本件についてみると、上告人らは、再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法七三三条が憲法一四条一項の一義的な文言に違反すると主張するが、合理的な根拠に基づいて各人の法的取扱いに区別を設けることは憲法一四条一項に違反するものではなく、民法七三三条の元来の立法趣旨が、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解される以上、国会が民法七三三条を改廃しないことが直ちに前示の例外的な場合に当たると解する余地のないことが明らかである。したがって、同条についての国会議員の立法行為は、国家賠償法一条一項の適用上、違法の評価を受けるものではないというべきである。

 そして、立法について固有の権限を有する国会ないし国会議員の立法行為が違法とされない以上、国会に対して法律案の提出権を有するにとどまる内閣の法律案不提出等の行為についても、これを国家賠償法一条一項の適用上違法とする余地はないといわなければならない。

 

 

 

【国籍法関係】

・父系女系優先主義

【東京地判昭和56年3月30日】

国民の要件 父系優先血統主義について・東京地判昭和56年3月30日
国民の要件 父系優先血統主義について(2)・東京地判昭和56年3月30日(続)

 

 

【最判平成14年11月22日】

要旨

国籍法2条1号が、子が日本人の父から出生後に認知されたことにより出生時にさかのぼって法律上の父子関係が存在するものとは認めず、出生後の認知だけでは日本国籍の生来的な取得を認めないものとしていることには、合理的根拠があり、憲法14条1項に違反しない。

 

判旨

 2 憲法一〇条は、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」と規定している。これは、国籍は国家の構成員の資格であり、元来、何人が自国の国籍を有する国民であるかを決定することは、国家の固有の権限に属するものであり、国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかは、それぞれの国の歴史的事情、伝統、環境等の要因によって左右されるところが大きいところから、日本国籍の得喪に関する要件をどのように定めるかを法律にゆだねる趣旨であると解される。このようにして定められた国籍の得喪に関する法律要件における区別が、憲法一四条一項に違反するかどうかは、その区別が合理的な根拠に基づくものということができるかどうかによって判断すべきである。なぜなら、この規定は、法の下の平等を定めているが、絶対的平等を保障したものではなく、合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、法的取扱いにおける区別が合理的な根拠に基づくものである限り、何らこの規定に違反するものではないからである(最高裁昭和三七年(オ)第一四七二号同三九年五月二七日大法廷判決・民集一八巻四号六七六頁、最高裁平成三年(ク)第一四三号同七年七月五日大法廷決定・民集四九巻七号一七八九頁)。

 3 法二条一号は、日本国籍の生来的な取得についていわゆる父母両系血統主義を採用したものであるが、単なる人間の生物学的出自を示す血統を絶対視するものではなく、子の出生時に日本人の父又は母と法律上の親子関係があることをもって我が国と密接な関係があるとして国籍を付与しようとするものである。そして、生来的な国籍の取得はできる限り子の出生時に確定的に決定されることが望ましいところ、出生後に認知されるか否かは出生の時点では未確定であるから、法二条一号が、子が日本人の父から出生後に認知されたことにより出生時にさかのぼって法律上の父子関係が存在するものとは認めず、出生後の認知だけでは日本国籍の生来的な取得を認めないものとしていることには、合理的根拠があるというべきである。

 以上によれば、法二条一号は憲法一四条一項に違反するものではない。

 

 

【最大判平成20年6月4日】

国籍法3条1項の合憲性(1) 最大判平成20年6月4日・国籍法違憲判決
国籍法3条1項の合憲性(2) 最大判平成20年6月4日・国籍法違憲判決・裁判官泉徳治の補足意見・裁判官今井功の補足意見
国籍法3条1項の合憲性(3) 最大判平成20年6月4日・国籍法違憲判決・裁判官田原睦夫の補足意見・裁判官近藤崇晴の補足意見
国籍法3条1項の合憲性(4) 最大判平成20年6月4日・国籍法違憲判決・裁判官藤田宙靖の意見
国籍法3条1項の合憲性(5) 最大判平成20年6月4日・国籍法違憲判決・裁判官横尾和子,同津野修,同古田佑紀の反対意見
国籍法3条1項の合憲性(6) 最大判平成20年6月4日・国籍法違憲判決・裁判官甲斐中辰夫,同堀籠幸男の反対意見

 

【入会権】

【最判平成18年3月17日】

要旨

1 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。

2 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効である。

 

判旨

入会権は、一般に、一定の地域の住民が一定の山林原野等において共同して雑草、まぐさ、薪炭用雑木等の採取をする慣習上の権利であり(民法263条、294条)、この権利は、権利者である入会部落の構成員全員の総有に属し、個々の構成員は、共有におけるような持分権を有するものではなく(最高裁昭和34年()第650号同41年11月25日第二小法廷判決・民集20巻9号1921頁、最高裁平成3年()第1724号同6年5月31日第三小法廷判決・民集48巻4号1065頁参照)、入会権そのものの管理処分については入会部落の一員として参与し得る資格を有するのみである(最高裁昭和51年()第424号同57年7月1日第一小法廷判決・民集36巻6号891頁参照)。他方、入会権の内容である使用収益を行う権能は、入会部落内で定められた規律に従わなければならないという拘束を受けるものの、構成員各自が単独で行使することができる(前掲第一小法廷判決参照)。このような入会権の内容、性質等や、原審も説示するとおり、本件入会地の入会権が家の代表ないし世帯主としての部落民に帰属する権利として当該入会権者からその後継者に承継されてきたという歴史的沿革を有するものであることなどにかんがみると、各世帯の構成員の人数にかかわらず各世帯の代表者にのみ入会権者の地位を認めるという慣習は、入会団体の団体としての統制の維持という点からも、入会権行使における各世帯間の平等という点からも、不合理ということはできず、現在においても、本件慣習のうち、世帯主要件を公序良俗に反するものということはできない。

 しかしながら、本件慣習のうち、男子孫要件は、専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり、遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては、性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。

 男子孫要件は、世帯主要件とは異なり、入会団体の団体としての統制の維持という点からも、入会権の行使における各世帯間の平等という点からも、何ら合理性を有しない。このことは、A部落民会の会則においては、会員資格は男子孫に限定されていなかったことや、被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体では会員資格を男子孫に限定していないものもあることからも明らかである。被上告人においては、上記1(4)エ、オのとおり、女子の入会権者の資格について一定の配慮をしているが、これによって男子孫要件による女子孫に対する差別が合理性を有するものになったということはできない。そして、男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らし、入会権を別異に取り扱うべき合理的理由を見いだすことはできないから、原審が上記3(3)において説示する本件入会地の入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても、男子孫要件による女子孫に対する差別を正当化することはできない。