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日本国憲法   第一章 天皇

 

第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

 

第二条  皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。

 

第三条  天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

 

第四条  天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。

○2  天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

 

第五条  皇室典範 の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

 

第六条  天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

○2  天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

 

 

【民事裁判権】

最判平成元年11月20日

天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である。

 

【天皇の基本的人権】

富山地平成10年12月16日

()(1) そこで県教育委員会による本件作品の特別観覧許可申請の不許可、県立美術館及び県教育委員会による本件図録の閲覧の拒否が、その他の原告らの有する知る権利に対する必要かつ合理的な範囲内の制限であるとして是認されるか否かについて検討する。

 (2) この点について、被告らは、まず、本件作品及び本件図録を非公開とした理由として、天皇も自然人として人格権を有しているところ、本件作品は昭和天皇のプライバシーの権利ないし肖像権を侵害するかその疑いがある旨主張する。

 ところで、憲法一三条は、いわゆるプライバシーの権利を保障しており、公権力がその人の意思に反して接触を強要し、その人の道徳的自立の存在に関わる情報を取得し、あるいは利用ないし対外的に開示することは原則的に禁止され、また、国民の私生活上の自由の一つとしていわゆる肖像権を保障しており、国民は、その承諾なしに、みだりにその容貌、姿態を撮影されない自由を有しているものと解される。そして、天皇も憲法第三章にいう国民に含まれ、したがって、憲法の保障する基本的人権の享有主体であり、天皇の地位の世襲制、天皇の象徴としての地位、天皇の職務からくる最小限の特別扱いのみが認められるものと解されるから、天皇にもプライバシーの権利や肖像権が保障されることとなる。ただし、天皇の象徴としての地位、天皇の職務からすると、天皇についてはプライバシーの権利や肖像権の保障は制約を受けることになるものと解するのが相当である。

 これを本件についてみると、本件作品は、前記第二、二、2のとおり、昭和天皇の肖像と東西の名画、解剖図、家具、裸婦などを組み合わせて構成されたものであること、さらに、本件作品は既に撮影された昭和天皇の写真を利用して製作されたものであるから、新たにその容貌等を撮影されない自由としての肖像権を侵害するか否かという問題にはならないこと、個人の私生活に関する情報を含まない単なる容貌等についての写真は右にいうプライバシーの権利が保障する個人の道徳的自立の存在に直接関わる情報ではないから、そのような写真を利用ないし対外的に開示しても直ちにプライバシーの権利の侵害になるとはいえないところ、本件作品において利用された昭和天皇の写真は何ら昭和天皇個人の私生活に関する情報を含まないものであり、かつ、その利用の仕方からしても昭和天皇個人の私生活に関する情報を開示するものではないと認められること(甲一五二、検甲一ないし四)、さらに、右にみたように、天皇の象徴としての地位、天皇の職務からすると、天皇についてはプライバシーの権利や肖像権の保障は制約を受けることを総合考慮すると、本件作品が昭和天皇のプライバシーの権利や肖像権を侵害するとか、その疑いがあるとは認められない。