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第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 

 

本条は、12条、13条、97条とともに、人権の総則規定であり、国民の人権の享有主体性を宣言したものとし、本条はそれを不可侵かつ永久の権利とし、現在のみならうず、将来の国民に与えられることを示している。

 

法的性格

「侵すことのできない永久の権利」及び97条と相まって、憲法改正の限界づけとして、憲法上の人権を憲法改正によっても変更できないとの性質を有するとの解釈が可能とされる。

 

「侵すことのできない永久の権利」の範囲とは、第3章の冒頭で国民の要件について記載したことに続き、11条として基本的人権の享有を述べていることから、第3章の「国民の権利」全体と解するのが素直な解釈として、自由権のみならず、社会権等をも含む人権条項全体を憲法改正の限界と考えらえる。

第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

自由・権利の保持責任とその権利の濫用

 

 

本条の趣旨

憲法11条および97条で、基本的人権が国民の「永久の権利」として与えられたことを受けて、人権主体となった国民の在り方を規定したものである。

しかし、前段「不断の努力によって、これを保持しなければならない」とするが、いかなる努力をどの程度しなければならないのか、明確な判断は困難で、具体的な国民の努力を規定した法効果をもつ規定とはいえない。

 

また、後段「濫用してはならない」「公共の福祉」のためにこれを利用する責任を負うとの規定を、国民の義務を課す法的効果をも つと解することは、憲法を国民の義務の体系と解する点で、近代的意味の憲法(自由の基礎法)と矛盾する性質を有するので、法効果として具体的な国民の努 力・義務を規定したものと解するのは妥当ではない。


(なお、国民の義務を課す体系は法律が担っているので、「権利の濫用」をしてはならないとの具体的法的義務は民法1条3項等によるすでに認められており、「憲法」と「法律」の性質の違いから、上記のように具体的な法効果を導かないとしているに過ぎない。)