平等権 総論

 目次


14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

(1)趣旨

*1項前段は、近代憲法の基本原則である平等原則を規定する。

*1項後段は、前項の平等原則を例示的に示す。

*2項は、貴族制度を廃止することを規定している。世襲の天皇制はこれの例外とされる。

*3項は、栄典を伴う特権を禁止している。

 

*平等原則とは、事実的・実質的差異を前提とした相対的平等を意味し、合理的根拠を欠く別異取扱いが禁止される。

 人権の根拠である個人の尊厳は、各個人の自由とそれぞれの自由の平等を要請する。

 近代市民革命では、自由・平等の2つの理念が深く結びつきあって、身分制社会を打破し、近代立憲主義を確立していった。

 しかし、自由と平等は相反する側面も有する。19世紀から20世紀において、すべての個人を法的に均等に取り扱い自由な活動を保障する機会の平等・形式的平等は、資本主義社会の進展に伴い社会・経済的不公平の拡大をもたらした。そこで、20世紀以降の社会福祉国家においては、社会的・経済的な弱者に対して、現実の不公平を解消するために実質的平等・結果の平等を一定程度要請することが必要となった。

 もっとも、実質的平等の実現は、14条を根拠に、現実の具体的な権利が認められるのではなく、社会権の保障にかかわる問題とされる。ただし、社会権を保障するための施策や積的差別是正措置の合理性を考慮するにあたって、実質的平等の実現が考慮されている。

 

(2)主体

*平等権は、他の人権と同じく生まれながらにして有する権利である。したがって、日本国民に保障されることには争いがない。

*外国人に対しても、人権の前憲法的性格から、平等原則は、権利の性質上適用可能な事項については特段の事情がない限り平等権が保障される。

*天皇及び皇族に対しては、憲法自体が想定する皇位の世襲と職務の特殊性から必要最小限度の特例が認められ、それ以外の事項については平等権が保障される。

 

(3)法の下の平等

「法の下」とは、平等権が憲法上の権利として立法上も要請される観点から、法律の適用のみの平等(立法者非拘束説)ではなく、立法者を拘束し、法律の内容そのものが平等であること(立法者拘束説)を要請すると解される。

 

「平等」とは、各人の事情の相違を考慮せずに同一の処遇を要請する絶対的平等は現実的でなくかえって個々人の自由・平等取扱いを損なうので、人間の具体的な差異があることを前提に、その差異に相応した法的取扱いをみとめつつ、その差異に相応した法的取扱いの比率の均衡を要求するものである。恣意的・合理的根拠を欠く差別は許されないが、合理的根拠を有する別異取扱いは憲法上許容される。

 

(4)1項前段と後段の関係

本条1項後段に掲げられた人種・信条等の差別禁止事由は、歴史的に存在した不合理な差別事由を例示として列挙したものと解される。もっとも、歴史的に存在した不合理な差別として、その性質ごとに厳格な判断を要求しているとの特別の意味を読み込む見解も有力である。

 

(5)違憲審査基準

①本条1項後段列挙事由のつき人種・信条・門地による差月、あるいは精神的自由権ないし憲法上それに関連・同視できる程度の重要な権利(選挙権等に)については、不合理性が想定され、あるいは重要な権利にかかわるものとして慎重な審査が要求されるので、立法目的が必要不可欠なもので、立法目的達成手段が必要最小限度のものであるかという厳格な審査基準を適用し

②経済的自由の積極規制目的や社会経済的規制立法などの立法裁量を広く認める事項については、立法裁量を尊重し、立法目的が正当で、目的と手段との間に合理的な関連性を有するかという緩やかな基準を適用し、

③本条1項後段列挙事由のつき性別や社会的身分による差別・経済的自由のうち消極目的については、その性質上一定の慎重な判断が要請されるとして、目的が重要で、手段との間に実質的関連性があることを要求する厳格な合理性の基準を適用する

との見解が学説上有力である。

 

判例は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づく別異取扱いであるか否かを検討する。

 

 

 

 

(6)人種とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身(人種差別撤廃条約1条)

 

(7)信条とは、宗教・信仰のみならず、思想・世界観等を含む一切の信条をいう。

 

(8)性別

 

(9)社会的身分とは、広く人が社会おいて、一時的ではなしに占めている施設

 

(10)門地とは、家系・血統等の家柄を指す。